薄衣の向こう

(19)

「ちっ……う……っ」

必死で先ほどのサザキの舌の動きを真似しようとするのだが、どうも上手くいかずに、唾液だけがお互いの口の端から溢れて滴り落ちた。

そうして千尋が夢中になっているとサザキの左手がゆっくりと動き、彼女の背をしっかり抱きしめてくれた。

「……姫さん」

ようやく唇を解放してくれた千尋を見上げ、サザキは惚けたようにつぶやいた。

「あんた、わかってやってんのか?」

すると千尋は口元を手の甲で拭いながら、眉尻を下げて泣き出しそうな表情をしつつ何度もうなずいた。

「そっか……。じゃあ、もう遠慮しないぜ?」

「うん……サザキならいい。サザキじゃなきゃ……いや」

「……可愛いこと言ってくれるな、あんたは」

サザキの笑みが嬉しくて泣き笑いを浮かべた瞬間、無防備になっていた秘部にサザキの長い指が後ろからぬるりと浸入してきたので、千尋は思わず咽喉を鳴らした。

「ふあ……ああ……っ」

「乾いちまったからな。もう少し、ほぐしといたほうがいい……。大丈夫だ、すぐ気持ち良くしてやる……」

「あ……ああっ……んっ……」

サザキの指が胎内の襞を擦り上げるたび、千尋は彼の身体にしがみついて腰を揺らした。

初めて感じた時と同じように白い光に包まれると思った瞬間、粘った水音とともに彼の指が引き抜かれた。

切なげに吐息を漏らし、名残惜しさに自身の胎内がぎゅっと縮こまるのを感じながらサザキを見ると、彼は千尋の腰を抱え上げ、今まで指で蹂躙していた彼女の秘めた入口をそっと押し広げた。

「千尋、さっきの深呼吸だ。あれ……やってみな」

「……う、うん」

サザキに抱え上げられたまま、千尋は恥ずかしげに小さくうなずいた。一度大きく息を吸うと、そのままゆっくりと吐き出した。

「いいぞ、その調子だ……吸って……吐いて……吸って……そしたら少し息を止めて……」

サザキの声に合わせて、千尋は呼吸を繰り返した。そして大きく息を吸い込んで身体の力を抜いた刹那、サザキは彼女の腰を自身の上に落とした。

「あうっ!!」

叫び声をあげて千尋が息を詰めると、サザキを飲み込んだ胎内がぎゅっと委縮した。その締めつけのきつさにサザキも小さく呻くと、自分の肩にしがみついて眉をひそめる千尋の肩を優しく撫でた。

「ひ、姫さん……まだ半分だ……もすこし、力……抜いてくれ」

「……だ、だって」

「辛いのは……わかる。けど、力入れたら余計にキツいぜ? ……な? オレを信じてくれ……」

そう言ってサザキがあやすように千尋の肩を叩くと、しばらくして千尋ははあっと大きく息をついて肩の力を抜いた。そこでサザキは自分の左手の指を千尋の右手に絡ませてきつく握りしめると、潤んだ瞳ですがるように見つめてくる千尋に微笑みかけた。

「ごめんな……また痛い思いさせちまうけど、なるべく長引かないようにする。だから、もう少しだけ辛抱してくれ」

「……うん。大丈夫」

小さくうなずく千尋の額に唇を寄せ、安心したように目を伏せる千尋の身体に覆いかぶさるようにして牀の上に倒れたサザキは、彼女の片足首を肩の上に乗せて大きく開かせると、そのまま一気に身体を進めた。

「ひゃあん!」

千尋が嬌声を上げて背をのけ反らせるとサザキはその白い腹部にそっと唇で触れ、それから右手の指を千尋の左手に滑り込ませて抑えるように握りしめながら、ゆっくりと腰を前後に動かし始めた。

「あっ……あっ……あ、ああっ……」

身体を二つに切り裂かれるのではないかと思うほどの痛みを感じるたび、千尋は無意識に逃げ出そうと足を動かした。

そのたびにサザキが絡めた両手の指に力を込め、耳元で何度も彼女の名を呼んだ。

「千尋、千尋……ち、ひろ……ちひ……ろ」

名前を呼ばれているだけなのに、千尋は嬉しさと切なさでひたすら涙を流し続けた。

そうしているうちに突き上げられている痛みを忘れ、ただサザキの熱に満たされている悦びだけが、彼女の感覚すべてを支配し始めた。

「サザキ……サザ、キ……好き……サ、ザキが好き。す、きなの……っ」

「オレもだ、千尋。あんたが好きだ……好きで、好きで……どうしようもねぇんだ」

そう言って千尋の身体をぎゅっと腕の中に閉じこめたサザキは、背中の翼を大きく広げてから、ひと際強く千尋の中を突き上げた。

ふわりと柔らかな羽根が敷布の上に落ちて舞うのを目の端に捉え、千尋は満ち足りた幸福感に酔いながらサザキの腕の中で果てた。

それを追うようにサザキも彼女の胎内に熱を放ち、腕の中の千尋の穏やかな顔を見つめて微笑むと、そのまま身体中の力を抜いた。