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つなぐ手と手

(6)

「おっかしいな? どこに雲隠れしちまったんだぁ?」

しきりに首を傾げながら陣中を行きつ戻りつしている主を見つけた石田佐吉は、素早く駆け寄って行った。

「秀吉様! なにかお探しですか?」

すると小姓の声に視線を向けた秀吉は一瞬困ったように眉をひそめてから、すいっと視線を逸らして鼻の頭を掻いた。

「よう、佐吉。いやぁ、探し物っちゅうか、探し人っちゅうか……あのな。もう少し、こっちに寄れ」

急に身を屈めて声を落とす秀吉につられ、佐吉も中腰になると横歩きをしつつ秀吉に寄り添った。そして主が耳元に手を添えてこそりと漏らした声にじっと耳をそばだてた。

「お前、安土を出る時に合流した若衆を覚えとるか? ほれ、オレの馬の前に飛び出してきた…」

「はい、覚えております。秀吉様が格別のお取り立てをされた方ですね?」

「そうそう! そんでだな、そいつがいま、どこにいるのか知ってるか?」

ぼそぼそと耳元で告げられた言葉に、佐吉は怪訝そうに首を傾げた。しかし彼は主に対して絶対服従を自分に課しているので、すぐに首を振ると秀吉にちらと視線を送った。

「申し訳ありませんが、私は存じておりません。なんでしたら皆に伝達し、探し出すようお命じになられては…」

「ああ、いやいや! そこまでするこっちゃねぇよ! 知らねぇならそれでいいんだ、うん。あとは自分で探すから」

「ですが、秀吉様お一人で探すよりも、皆で手分けした方が早く見つけられましょう」

ぴしゃりと言って佐吉は秀吉を見上げ、彼が所在なげに頭を掻くのを不思議そうに見つめた。

「けれど、そのようにこちらから探さすとも、秀吉様が出頭せよとお命じになればよいのではないでしょうか? あの者は秀吉様の傘下に自ら加わったのですから、主の命には従うべきかと心得ます」

「まぁそうなんだが……あんまり命令とかしたくねぇんだよなぁ。そんでなくとも、なんか妙に距離を置かれちまって寂しいってのに…」

「は?」

少年の怪訝そうな声に思わず息を飲んだ秀吉は、自分の発言を誤摩化すようにへらりと笑うと一歩後ろに下がり、佐吉の頭を乱暴に撫でた。

「うわわっ!?」

「ま、まあっ! お前はあまり気にせんでいいぞ! そんじゃ、オレはちっとばかり用事を思い出したんで、また後でな!」

「え? 秀吉様っ!?」

佐吉の頭から手を離した秀吉は、なにかに追われるようにそそくさとその場から駆け出した。その足の速さに驚いて立ちすくんでいた佐吉だったが、やがて子供らしからぬため息をつくと大仰に肩を落とした。