「それが……お前の出した答えか……それもよかろう」
レヴィアスはふっと笑うと、差し出した手を引っ込める。すると突然辺りが闇に包まれ、ぼんやりと浮かび上がったレヴィアスの身体から光が爆発して辺りに飛び散り始めた。
「ならば見せてもらおうか。我を倒す、その力とやらをな」
レヴィアスの叫びに呼応したかのように、無数の光の弾丸はアンジェリーク達に容赦なく襲いかかってきた。
「きゃあっ!」
「うわっ!!」
アンジェリークは風圧で壁に叩きつけられた。その衝撃で一瞬息が詰まる。
「アンジェリーク!」
かろうじて踏みとどまったヴィクトールが心配そうに手を差し伸べた。だがアンジェリークは軽く笑うと、微かに首を振る。
「大丈夫です。私は……まだ、倒れるわけにはいかない」
壁に手を這わせ寄り掛かるようにして立ち上がりながら、少女は気丈にも差し出された手を取ることなく自力で立ち上がった。
差し出した手を軽く握ると、ヴィクトールは苦笑した。
「そうだな。お前の手をとるのは……あいつだからな」
「ゼフェル! しっかりして下さい!」
「騒ぐなよ……っせーな…」
強がっているが痛くないはずはない。ゼフェルは、強く打ち付けた彼の右肩に恐る恐る差し伸べるルヴァの手を軽く払いのけた。
「私を庇ってくれたんですね。ありがとう、ゼフェル。でもあなたが怪我をしたんでは何にもなりませんよ」
ルヴァは目を閉じると、手を翳したまま癒しの呪文を唱える。
「おめーがとろくせーから悪いんだろ! ったくよーっ」
「師弟の絆を確認しあってる場合じゃないようだよ、あんた達!」
オリヴィエは素早く二人を庇うように立つと、剣を構える。
「こいつ、冗談抜きで強いからね! 気ぃ抜くんじゃないよ!」
オリヴィエはヴィクトールにちらと視線を送る。ヴィクトールも微かにうなずき、改めて剣を構えた。ルヴァは両手を静かに前に差し出すと、詠唱を始める。
彼の身体から不思議な光が立ち上り、その光はアンジェリーク達をやさしく包み込んだ。
「ゼフェルっ! 援護…頼んだからね」
オリヴィエはゼフェルにウインクする。
「まっかせとけってんだ!」
叫ぶと同時にゼフェルはボウガンを素早く身構え、レヴィアスめがけて連射した。
それを合図に、オリヴィエは高く跳躍した。そして上空から体重を乗せた刃を振り下ろす。ヴィクトールはその体格からは想像もつかない俊敏さで、レヴィアスの懐近くまで一気に間合いを詰め、大剣を振りかざして一気に胸元へ突き入れたが、次の瞬間、強い力ではじき飛ばされた。
ルヴァの守りの魔法のおかげで身体の傷こそ少なくてすんだが、心の衝撃はかなりなものだった。
「なんて奴だ…」
「攻撃が効かないっての?」
「その程度なのか…。もっと我を楽しませてはくれないのか?」
レヴィアスは呆然と立ち尽くす一行を見下ろして哄笑した。マントを靡かせて悠然と立つその姿はひどく大きく見える。
「皆さん、下がって下さい。私が!」
たまり兼ねてアンジェリークは前に出ようと足を踏みだし、ヴィクトールとオリヴィエに慌てて押しとどめられた。
「無茶を言うな! お前にかなう相手じゃない!」
「下がってな、私達なら大丈夫! まだいける!」
庇いあう彼らの様子をしばらく眺め、レヴィアスは唇を歪めて笑う。
「面白いことを思いついたぞ。その娘……お前達から奪い取ったらどうなるのだろうな」
驚いてオリヴィエ達が顔を上げると、その目の前でふっとレヴィアスの姿がゆがむ。そして次の瞬間、アンジェリークは自分の目の前に金と緑の瞳があるのがわかって身体が硬直する。
「うっ!」
動けない彼女の首に何かが絡みつく。いつの間に運ばれたのか、気がつくと古い祭壇の上で、レヴィアスに首を締め上げられるようにして立っていた。
「アンジェリーク!!」
「その手を離せ!」
オリヴィエ達は歯ぎしりをして怒鳴りつけた。あまりにも一瞬の出来事で、だれ一人身動き一つ出来なかった。