? Guys and Dolls

陰陽夢

(6)

「エルンスト……彼は?」

「私達の仲間のアリオスですが。どうかしましたか?」

「なかま? ……いやなんでもない」

ロキシーは不思議そうにアリオスを見つめていたが、すぐに思い直したようにエルンストに微笑みかける。

「しかしおまえに助けられるとはな。俺もヤキが廻ったみたいだなぁ」

「ロキシー……」

エルンストの真面目な反応を楽しみながら、ロキシーは隣室へと向かった。自分の石化を解いた為に壊れてしまった、蒼のエリシアを元に戻す方法を調べるためだ。エルンストも慌てて彼の後に続く。

『あのキーファーって野郎と同じ反応……何奴も此奴も俺の顔を不思議そうに見やがる』

不快さが表情に出ていたのだろう。アンジェリークが心配そうに声をかけてきた。

「顔色が悪いわ、アリオス」

不安な表情で見つめる少女の存在を認め、アリオスはほっと息を吐いた。

「大丈夫だから、そんな顔すんな」

「でも……」

アリオスは、安心させるようにアンジェリークの頭をポンと軽く叩く。

「心配すんな。おまえの不安そうな顔、見たくねえんだよ」

「アリオス……」

「言っただろ、最後までおまえらを守ってやるって。それが俺の仕事だからな」

「……うん」

アンジェリークもほっとしたらしく、いつもの無邪気な表情に戻る。

『何があったって守ってやるよ。……おまえだけは、絶対に』

 

「……どうやら、彼らを甘く見過ぎていたようですね」

水色の髪を微かに揺らし、ユージィンは振り向いた。

「まぁ、楽しみが増えたと思えばいいじゃん。あんまり手ごたえないのもつまらないしね」

明るい風の守護聖の風貌そのままに、ウォルターは快活に笑う。

「計画に支障をきたしては本末転倒ですよ、ウォルター」

「なんだ、そのほんまつ……?」

ゲルハルトが口を挟む。彼は炎の守護聖の身体を大層気に入っているようだが、この宇宙の言語にはまだあまり慣れていないらしい。

聞きなれない言葉に首を傾げ、ユージィンの端正な顔を怪訝そうに覗き込んだ。

「目先の楽しみに捕らわれて、本来の目的が蔑ろになることです。……わかりますか?」

「ふーん。要するに、今を楽しんで後にもしっかり残しておけばいいって事だろ?」

「ははっ。相変わらず馬鹿だなぁ、ゲルハルトは」

「んだと? 人のこと言えないだろ、おまえだってよ」

「まぁ、ね。難しいことはカインやユージィンにまかすよ。俺はいち抜けたっと」

「俺も。ま、適当にやってくれや」

ウォルターとゲルハルトの能天気な言葉には耳を貸さず、ユージィンはレヴィアスの部屋の扉を黙って見つめていた。

『レヴィアス様……そろそろ時が来たようです。あなたが本来の力を取り戻す時が……』

 

「困ったわ。皆さんどこに行っちゃったんだろう……」

アンジェリークは壊れたロッドをきつく握りしめる。しかし反応は何もないし、誰かが側にいる気配も感じられない。

不安になって自分の掌をしばらく見つめる。だが、すぐにぶんぶんと頭を振ると自分の頬を軽く抓り、自分を励ますようにわざと大声を出してみた。

「しっかりして、アンジェリークっ!! そうよ、くよくよしたって始まらない。前に進まなきゃ! そうすればきっと皆さんに会えるわ」

そしてまずは出口を探す事にして、薄暗闇の中を大股で歩きはじめた。

 

虹の森にいけば、蒼のエリシアが直るかもしれない。

ロキシーはそう告げた。

「俺のせいで壊れてしまったのに、こんな不確定な情報しかやれなくてすまないな」

ロキシーは旅支度を始めたアンジェリークに、コートを手渡しながら呟いた。

「いいえ、あなたは封印の鍵を守って下さったじゃないですか」

アンジェリークは首を振るとにこりと微笑み、ロキシーから受け取ったコートに腕を通す。

「……あんたは強い女だな」

「そんなことないです、皆さんに守ってもらうだけで」

「心がって事さ。……あんたならこの先何が起こっても大丈夫だろうな」

「え?」

ロキシーが視線を逸らしながら呟いた最後のひと言に、アンジェリークは怪訝そうに彼の顔を覗き込む。しかし、ロキシーはそれを誤魔化すように軽く微笑みを返してきた。

「いや。……エルンストを頼むって言いたかったんだ」

「ロキシーさん?」

 

白銀の輪に包まれた惑星には4つの集落があり、それぞれの族長の許可がなければ、虹の森の場所は教えてもらえない。

だからアンジェリークは必死だった。

『こうしている間にも女王陛下の力はどんどん失われている。こんなところでぐずぐずしてはいられない。これは私がやらなくてはいけない事。私にしかできない事なんだから……』

アンジェリ-クは4人の長老を前にして、今この宇宙が大変な危機に陥っている事。

それを回避するために、なんとしても自分のエリシアのロッドを直さなければならないことを伝えようとした。そんな彼女の真剣な様子が伝わったのだろう。

やがて最高齢だと思われる北の族長が、ゆっくりと重い口を開いた。

「……あなた方の志はわかりました。……よろしい、特別にお教えしましょう」

そして、この惑星の秘密をぽつりぽつりと漏らし始めた。

自然洞窟の奥にこの星の民しか行けない湖がある。そこが虹の森であると。