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ティールはフェルカドの剣をジャウンで受けながら、ゼフェルに目配せを送った。
「ゼフェル、頼む! 兄上とシルマを安全なところへ。兄上の手当てをはやくっ!」
ランディとオスカーは加勢をしようと剣を抜いて身構えた。それを視線の端でとらえてティールは叫んだ。
「あなた達の武器は通用しない! たちまち溶かされてしまう! だから早く、二人を安全なところへ!」
「だって、ティール! 君一人じゃ!」
ランディが叫ぶと、ティールはフェルカドの光の剣の先をすんでのところで除け、地面を蹴って転がるように彼の脇をすり抜け立ち上がる。
「大丈夫! おれ、今嬉しいんだ。やっと兄上を守れる。兄上の役に立てるから。それにこんな奴に負けるほどおれは弱くないよ!」
ジャウンを構えにやりと不敵に笑うティールを見て、ランディは一瞬背筋に戦慄が走った。
『ティールってこんな子だったか? ……なんだろう、嫌な予感がする』
まだ躊躇うランディをオスカーががしっと押さえ、振り向く彼に微かに頷いてみせた。
「彼の言う通りだ。邪魔しちゃいけない。これはあの坊やが乗り越えなくちゃいけない試練だ。誰の手も借りずにな」
「オスカー様…」
「あの坊やは口ばっかりじゃない、かなりな腕前だ。だが……」
ランディが不安げに見上げると、オスカーはポツリと呟いた。
「あの坊やとフェルカドから……同じ気配がする。アディルやルヴァとは違う。もっと荒々しくて残忍な……嫌な気配が」
「見た目より傷は浅いです。ただ安心できる状況でない事は確かですけどね」
ルヴァはアディルの腹部に、シルマのマントを裂いてグルグルと巻き付けて血止めをする。
「こんなところに怪我人を何時までも置いてはおけません。誰か彼をおぶって街に戻って下さい」
ルヴァは、アディルに肩を貸そうと彼の腕を掴んだ。しかしアディルは微かに首を振ると、ルヴァの体を押しとどめ、ずるずると壁に身体を預けるようにして上体を起した。
「ティールを……置いてゆけというんですか? 私の為に、私の所為でフェルカドと戦っているあの子を置いてゆけと?」
「あなたを守る事。あなたがもとの元気なお兄さんに戻る事。それがあの子の望みですよ。その為に戦っているんですから」
「私は、あの子を巻き込んでしまった。とうとう触れさせてしまった。これは……私の罪です」
アディルは青い顔をしたままほーっと辛そうに息を吐いた。シルマが彼の手を取り、優しく撫でる。
「アディル、自分を責めないで。……仕方がなかったのよ」
「触れさせてしまった……ってどういうことだよ?」
ゼフェルが苛立たしげにしゃべる。彼ははやくティールの側に戻りたいのだ。あの少年の無事を見届けたいのだ。それにこんなに離れていては、いざという時加勢できない。
アディルはシルマをちらりと見、ゼフェルに視線を移す。そして悲しそうな顔をした。
「ただの子供でいさせたかった。呪われた過去の血を思い出させたくなかった。……自らの手で全てを焼き尽くした古代人の血など……復活させて欲しくなかった」