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ランディの押したスイッチは、どこに隠されていたのか大石を通路へと呼び込んだ。入り口の上から地響きとともに落ちてきた石は、ごろん、とゆっくり回転を始め通路の奥へと進んでくる。
「わーーっ!」
「このっ! のー天気野郎っ! おめーもかわんねーじゃねーかっ!」
真っ先に駆け出すランディとマルセルを、ティールとゼフェルが慌てて追いかけた。
「おまえらっ! 横道にそれろっ!」
オスカーが慌てて叫ぶが、走り出した子供達には聞こえない。ちっと舌打ちをしてすぐに追いかける。
「ルヴァ、あんたはこっちっ!」
オリヴィエはシルマとルヴァの腕を掴むと、開いた壁から向こう側に転がり込んだ。と、三人がいた場所をローラーのように大石が通過していった。
「間一髪、だねぇ」
「オ、オリヴィエ。ゼフェル達が……」
「わかってるって。さ、追いかけるよっ!」
オリヴィエは立ち上がると、すでに体勢を整えて走り出していたシルマを、ルヴァの腕を引っ張りながら追いかけた。
息を切らせて走る少年達の後ろには、轟音をたてて通路一杯に大石が転がって追いかけてきている。顔を真っ赤にして走るマルセルは、ふと何かに思い当たって、自分の腕を引っ張って走るランディの袖を引いてみた。
「ねぇ、ランディ。ぼくこういう場面見た事あるよ」
「え? どこで?」
「ほら、この間三人でビデオ見たじゃない。徹夜してさ」
「……あ! 思いだしたよ!」
「ほら、あの冒険活劇」
「ああ、あれは面白かったよなぁ」
「だよねー」
「おめーら、何ゆーちょーに話してんだっ!!」
ゼフェルとティールは全力疾走しながら、声をそろえてランディとマルセルに怒鳴りつけた。
「も、もしかして、あれって行き止まりじゃ……」
「げっ、やばいっ!!」
四人は必死に走った結果、先程引き返した地点、すなわち地面の裂け目に到着してしまう。
焦って後ろを振り返ると、こちらに向かってくるオスカーが見えた。そのすぐ後ろには、彼を追いかけるようにして大石がごろごろと転がって来ていた。
「危ないです、オスカー様!」
「止まるんじゃないっ!」
言うが早いかオスカーは、マルセルをひょいと小脇に抱え、ランディの肩をおもいきり掴んで壁に開いている穴にごろんと転がり込んだ。
「ゼフェル! ティールっ!!」
「くそっ! 間に合わなかったかっ!」
穴に転がり込んだ三人の前を、大石がごろごろと通過する。オスカーがマルセルの頭を押さえつけると、マルセルはぎゅうっとしがみついてきた。
やがてごうん、と石が何かにぶつかる音が聞こえたかと思うと、ず、ずずんんと轟音が響き地面が震えた。
そしてすぐ恐ろしいほどの静寂が訪れる。
「……ゼフェル達は大丈夫ですよね?」
砂煙がもうもうと漂い、げほげほと激しく咳き込みながらランディは上体を起した。
「わからん。……マルセル、すまないがもう少し腕の力を緩めてくれないか?」
「……え、あ。ご、ごめんなさいっ!」
ぱっとオスカ-から離れると、マルセルはすでに外に出ていたランディの隣に駆け寄る。
「ランディ……ゼフェル達は?」
すっと視線をそらすランディの様子に、マルセルの顔がみるみる青ざめる。それでも勇気を出して石の通り過ぎていった前方に恐る恐る目を向けてみた。
そしてふっと足の力が抜けて、思わず地面にしゃがみ込んでしまった。
「ゼ、フェ、ル…ティー、ルぅ…」
マルセルの視線の先には、先程と変わらない裂け目がしっかりと横たわり、その少し奥の第二の亀裂には先程の大石が、まるで誂えたようにしっかりとはまっていて、まだもうもうと砂煙が上がっていた。
「……なんてことだ」
オスカーはさすがに額を押さえた。この状態では二人の少年が無事だと思うほうが無理だ。
石に押されて潰されるか、逃げたところで穴に落ちるだけ、しかも底が見えないほどその穴は深い。駆けつけたルヴァ達も、立ち尽くすランディ達を見て、瞬時に非常事態を察知した。
「まさか……ゼフェル……」
ルヴァが震える声でオスカーに問いかけた途端、わっとマルセルが激しく泣き出した。
「ウワ~ンっっっっっ! ゼフェル~ウウ、ティールっっっ! 死んじゃったなんて嘘だよね~!? 嘘だって言ってよ~~~ううう! 死んじゃヤダよ~~う!」
ランディがマルセルの肩に手をかけ彼を慰めようとした時、手前の穴から怒鳴り声が聞こえた。
「やいこら、マルセルっ! 勝手に人を殺すんじゃね~!」