? Guys and Dolls

蒼天幻想

第七章(1)

「――どっちだと思う?」

「う~~~ん。テイール、なんかヒントになりそうな事聞いてないかい?」

「おれが聞いたのってあれだけだよ。もしかしたら他にもあったのかもしれないけど……ゴメン、覚えてない」

ランディとティールはお互いに腕を組んで顔をしかめる。彼らの前には、奥へと続く通路が二股に別れていた。

少し遅れてやって来たオスカー、オリヴィエ、アディルらも二つに別れた道を見て微かに眉を動かす。

「まずは第1の試練って事?」

「第2の試練じゃないですか? 入り口を見つけるのが第1の試練だったんだと思います」

「細かい事を気にするとねぇ、大きくなれないよ、マルセルちゃ~ん」

「“選ばれし者はふたつ”これがそうなのか? 確かに道は2つだが」

「って事は、どっち行ってもいいって事じゃないの? 2つとも選ばれてんだからさ」

「そんな安直な……」

ランディが呆れてそう漏らすと、アディルが軽くうなづいた。

「いえ、悪い案ではないと思います。せっかくこれだけ人数がいる事ですし、二手に分かれて探すほうがむしろ効率的かもしれません。どちらかが行き止まりでも、残った方は祭壇の間にたどり着けるわけですから。フェルカドもおそらくこちらに向かっているでしょうし、いやもしかしたらもうこの街に入ったかもしれません。そうであれば一刻の猶予もありません、二手に分かれて先へ進みましょう。私は右に行きます。皆さんはどうなさいますか?ここから先は何があるか分かりませんから、引き返して下さっても結構です。むしろここまで同行して下さった事だけでも、どう感謝すればよいのか…」

「あのね、アディル。ここまで首突っ込ませといて今更引き返せっての?」

「そうですよ、水臭い事言わないで下さい。俺達仲間でしょう?」

「……くっさい台詞を、よくマジで言えるよな」

アディルは呆けたように皆を見たがすぐに表情を和らげ、彼の腕にそっと触れてきたシルマの手を軽く握って微笑む。

「わかりました。では行きましょう」

 

アディルがすっと前に進み、右の通路に入ろうとすると当然のようにティールが後に続いた。

「ティール、お前は左に行きなさい」

「どうして? おれ、兄上とおんなじ方に行きたい」

「王家の人間は私とお前だけなのだよ。その私達が同じ道を行ったのでは、分かれて進む意味がない。私は右へ、お前は左へ。分かれていればもし万が一、どちらかに何かがあったとしても王家が絶える事はないからね」

「なに言い出すんだよ! おれは王家なんて関係ない、兄上が生きていてくれればそれでいいっ! だからおれが兄上を守るよ、いいでしょう?」

「そういう訳にはいかないよ。たとえ私が死んだとしても、お前が残れば王家の血は絶えない。この星の指導者、アクハトの末裔が一人でも残ればそれでいい。王家を守る事、この星を導くことを最優先にして生きてきた……この生き方しか、私は知らないんだ」

ティールが拳を握りしめ、ぎゅっと唇を噛みしめて俯くのをしばらく見つめると、アディルは顔を上げた。

「ゼフェル様、マルセル様。お二人は弟について行って下さいますか? お二方が一緒なら、弟も心強いと思いますから」

「はい、ぼく達でお役に立つのなら」

「オレは、はなっからそのつもりだったぜ」

「……ありがとうございます」

「じゃ、俺も左に行く」

ランディはすたすたと前に進むと、マルセルの隣に並んだ。

「今度こそ俺が守るよ。もうお前達を見失ったりしないからな」

「ランディ……なんか、目の中が燃えてる」

「一人で盛り上がるな。誰が守ってくれって言ったんだよ?」

「あの~、子供達が左へ行くなら私もそちらに行っていいですかね?」

「ルヴァ!?」

それまで後ろで黙っていたルヴァが自己主張するように前に進むと、ランディの隣に立ってにっこりと少年達に微笑みかけた。

「なにがあるかわからないんでしょう? 私の知恵が、少しでもこの子達の役に立てばと思うので」

「ルヴァ様がついて来て下されば百人力です。何があったってへっちゃらですよ」

「ありがとう、ランディ」

「ちょーいまち! めちゃくちゃ偏ってるじゃないのさ!」

お子様四人と、武術はからっきしのルヴァ。

恐ろしいほど偏ったパーティ編成に、オリヴィエでなくとも不安を感じたのだろう、残りのメンバーは一様にうなずいた。

やがて長いため息をつくと組んでいた腕を解いたオスカーは、あきらめたように顔を上げた。

「……仕方がない、俺が左に行こう。そちらは任せるぞ、ヴィクトール」

「わかりました、お任せ下さい」

ジャバルが肩に掛けた銃をオスカーに渡そうとすると、彼はジャバルの腰に下げていた剣の柄に手をかけすっと引き抜いた。

「俺はこっちの方が好みなんでね。借りて行くぞ」

「ど、どうぞっ!」

ジャバルは慌てて腰のベルトから鞘を引き抜くと、オスカーに差し出した。

「ランディ様!」

「え?」

ランディが振り向くと、ぽんと彼の手にやや小振りの剣が鞘ごと放り投げられた。

「お貸しします。ただし、がむしゃらに前に踏み出すだけが本当の勇気ではありませんよ。お気をつけて」