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「守護聖がお尋ね者とはな。……なかなか面白い冗談だ」
「クラヴィス様、そのような言い方をなさると…」
またジュリアス様の血圧が上がります、と言う語尾をリュミエールは口の中でそっとつぶやいた。
ジュリアスは窓の外を見ていた。謁見の間のカーテンをぎゅっと握りしめ、何かを必死で堪えているようだ。
女王は転送されてきた紙を手に取り、軽く首を傾げている。
マルドゥークを出発したウォングループの採掘場の責任者が、街で配られていた手配書を王立派遣軍宛に転送し、そこに書かれた人物にもしやと思い当たったブラックストーン大佐が、ご丁寧にも聖地に送ってきたものだ。
受け取った王立研究院主任エルンストは、これまた馬鹿正直にも慌てて聖殿に届けに来たというわけだった。
「……あんまり上手じゃないわね、この似顔絵。ランディってもっとりりしい顔してるわよね? これ少し脳天気っぽ過ぎると思わない?」
「陛下、これはそういう問題ではないと思いますわ」
「あら、とっても重要な問題よ。だってこの宇宙の頂点に位置する守護聖が正確に描写されていないってまずいと思うの」
「ちょっとお貸し下さい。――私は特徴をよくとらえていると思いますわ。ほら、この口元とか……」
ブチッッ!と何かが切れる音が謁見の間に響き、一同はびくりと動きを止め音のした方にゆっくりと顔を向ける。
ジュリアスは窓の外に顔を向けたままだ。しかし彼の腕には窓から引き千切られたカーテンがふわりと掛かっていた。
「……ジ、ジュリアス?」
ロザリアが引きつった声を出すと、ぷるぷると肩を震わせ向こうを向いたまま、ジュリアスは地の底から響く様な声を出した。
「……エルンスト」
「は、はい!」
「宇宙艇を手配するのに時間はどれ位かかる?」
「は? ま、まさかジュリアス様……」
「女王陛下の介入を悟られまいとして行動させたことがすべて裏目に出てしまったようだ。もう黙っているわけにはゆかぬ」
その場の全員がさーっと背筋に冷たいものが流れるのを感じた。……ただ一人を除いて。
「……ふっ、苦労を自らしょい込もうとはな。相変わらず仕事熱心なことだ」