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「ご報告いたします。皇太子は現在、ウォングループの所有するマタルの採掘場に潜伏しているとの事です」
「……確かか?」
フェルカドは閉じていた目を僅かに開けると、目の前にぬかずく兵士を見つめる。
「はい。そこを視察中に何者かが連絡をとったようです。その後採掘場から抜け出た者はありませんので確かな情報かと」
兵士は顔を伏せたまま報告を続けた。フェルカドは立ち上がると窓の外を見つめ唇の箸を歪める。
「……女王陛下とやらはよくよくこの星に干渉したいらしい。勝手に調査隊など送り込んでこの星の宝を掘り起こし、貴重な資源だなどとぬかしおって。マタルは我らの始祖より受け継がれた貴重な宝。そうやすやすと他の星の民になど渡す必要はない。しかるべき価値と代償を献上してきた者のみに施しとして与えてやる物だ。しかも今度は主星の成金会社だと? ……シルマめ、大した女だ」
「は?」
フェルカドは振り向き、顔を上げた兵士に冷ややかに命じる。
「早急に兵を採掘場へと向かわせろ。皇太子を見つけ次第、宮殿に連れ戻せ。もし抵抗するような事があれば……かまわん、死体にしてでも引きずってこい」
「はっ!」
兵士は立ち上がり、フェルカドに一礼すると謁見の間を後にする。彼と入れ違いに、一人の女性を伴った兵士がフェルカドの前にぬかずいた。その兵士を軽蔑を込めた眼差しで睨みつける中年の女性は決してフェルカドの前で膝を折ろうとはしない。
「離宮より王后をお連れしました」
「……遠路お疲れではありませんかな、王后陛下。いや、今は前国王夫人とお呼びした方がいいですな」
ケレト国王夫人、リディアは侮蔑の眼差しをフェルカドに向けた。
「そなた、このような大それたことをして無事で済むと思うてか。例え人民が許しても、天霊アクハトはすべてご存知。正当な神の子に手をかけたそなたを許しはせぬぞ」
「なんとでも。神の血をひく者は国王だけにあらず。強き者、力のある者が世を統べるは当たり前のことでありましょう」
「たわけた事を。神の子の血を受け継ぐ者はただ一人。我が息子アドアディールの他に誰がいようぞ」
リディアが勝ち誇ったようにそう言うと、フェルカドはじっとこの女性を見つめあざ笑う。
「可哀想な方だ。所詮王家などこのような物。臭い物を歴史の裏に葬り去り、対面のみ保って日々を過ごす。腐っているのは自分達だとも知らずにな。あなたもその哀れな犠牲者の一人にすぎない。最後まで国王はあなたを信じていなかったのだから」
「……陛下の愛が私の上にない事などとうの昔から知っている。かの者の事も先刻承知じゃ。だが陛下は私には自らお話しなされた。それでも私を哀れだと申すか?」
リディアは一瞬寂しそうに伏せた目を、気丈にもすぐに持ち上げ、再びフェルカドに鋭い視線を浴びせる。
この気の強さのみを支えに、国王の寵愛が去った十数年を過ごしてきたのだろう。そういう意味では確かに、彼女は王族の哀しい犠牲者かもしれなかった。
フェルカドはそんな彼女を哀れむように見つめると、落ち着いた口調で諭すように話す。
「それだけではないという事よ。国王はその秘密を諸共連れて逝こうと考えていたようだが、そうはさせぬ。総てを闇に葬り去るなど絶対にさせはしない。私の総てをかけてでも……」