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「すっげー! ほら見てみろよ!」
「……ゴメン。ぼく、どこがすごいのかわからない」
「安心していいよ、マルセル。おれも何が良いのかわからないから」
ゼフェルは興奮ぎみに、あちらの機械、こちらのスクラップと忙しなく歩き回っている。
マルセルとティールはお互いの顔を見合わせ苦笑すると、がらくたに埋もれたソファーベットに腰掛けた。
その時マルセルは、ティールの腰にぶら下げていた短いスティックの様な物が微かにソファーにぶつかったのを見てすっと指差した。
「ねぇ、ティール。それ……」
ティールはマルセルの視線に気づき、腰に差していたその棒を手に取った。それはよく見ると、鍔のない刀の柄にも見える。柄の三分の二あたりに、コイン程度の大きさの蒼い石が埋め込まれている。
「ああ。じーちゃんが造ってくれたんだ。ジャウンっていうんだぜ」
「ジャウン?」
「うん。これ、おれしか使えないんだって」
そう言うと、ティールは柄を両手で握りしめ、目を閉じる。
すぐにジャウンに埋め込まれた蒼い石が鈍く光り始めたかと思うと、すーっと柄の先端から青白いプラズマの様な光が伸びた。それはまさに光の剣のように見える。
「……熱くないの?」
マルセルがその光の先端に触ろうとすると、ティールは慌ててジャウンを横にする。
「見た目は普通の剣と違って切れそうもないけど、下手に触ったら蒸発しちゃうよ」
「そ、そんなに危険なの」
「持ってみる?」
「え、い、いいよ。ぼくそんな」
ティールはいたずらっぽく笑うと、マルセルの手を取りジャウンの柄を握らせる。
「あ、危ないっ! ……あれ?」
ティールが添えていた手を放したので、マルセルは慌てふためき落とさないよう柄をしっかりと握りしめた。その途端蒼い石は輝きを失い、青白い光の刃は柄に吸い込まれるように消えてしまった。
「な、おれしか使えないっていったろ?」
ティールが屈託ない笑顔を浮かべるのにつられて、マルセルも引きつった笑みを浮かべた。
「すげーなぁ。この動力やっぱりマタルなんだろーな」
ゼフェルはひとしきり感心した後、自分の台詞にはっと気づく。
『そーだ。オレがここに来た理由って、マタルが欲しかったからじゃねーか! ごちゃごちゃしたんですっかり忘れてたぜ。っきしょー、ルヴァ達に見つかっちまったんじゃ、もー無理じやねーか!』
それにしても……とゼフェルは冷静になって改めて考える。
『――ホントにこの星、反乱なんか起きてんのか? 街のみんなはやけに冷静だし、どこにも混乱なんか起きてねーようだし。ティールにしたってテュフォンじーさんにしたって、こんなとこで落ち着いて住んでるし』
ゼフェルはソファに腰掛ける二人を振り返る。ジャウンを指差し何か説明するティールと、彼の手元を覗き込んでいるマルセル。二人は楽しそうにはしゃいでいる。
「なぁ、ティール。変なこと聞くけどよー」
ゼフェルは声をかけられて顔を上げる蒼い瞳から、軽く顔を背けて先を続けた。
「おめーら、その……逃げなくていいのか?」
「……なんで?」
「なんでって……危険じゃないのか? その、反乱軍とかよー」
「……反乱軍?」
ゼフェルのいった意味がしばらく飲み込めず、ぼんやりと考えていたティールは次の瞬間、瞳を鋭く光らせ素早く立ち上がるとゼフェルに詰め寄った。
「どういうことだよ、反乱軍って!?」
「え、おめーしらねーのか?」
今度はゼフェルが驚く。マルドゥークの人間がこの星で起きた反乱の事実を知らないというのか。マルセルも驚いて目を見張る。
「ホントに知らないの? この星で反乱が起きて王様が亡くなったんだ。それから他の星との取引を中止するって。それでぼくらはこの星に来たんだよ」
ティールは真剣に話すマルセルを振り返って、しばらく彼を睨んだかと思うと、すっとうつむき黙り込む。そして弾かれたように顔を上げると、階段を駆け上がった。