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先程の店から十分程歩いたところに、ゼフェルが居ると思われる工場があった。
「――たしかに、ゼフェルが好きそうな場所ですねぇ」
ルヴァは思わず引きつった笑いを浮かべた。
成程、スクラップ工場といわれても仕方がない状態で、何だかわからない機械の一部やランドバギーのタイヤの空気が抜けた状態の物が入り口の辺りに転がっていたりと、本当にここに人が住んでいるのかも怪しい場所だ。
「こんな所にマルセルも一緒にいるんでしょうか」
ルヴァが思わずため息をついて俯いた途端、オスカーがルヴァの袖を引っ張って裏口と思われるほうに顔を向けさせた。
「ルヴァ、ぼんやりしている暇はないぜ。ほら、見てみろ」
オスカーが指し示す先に一人の少年の姿があった。どこかに買い出しにでも行っていたのか、小さな紙袋を抱えている。工場の裏口からはこちらが見えないのだろう、彼はちらりと一瞬こちらに顔を向ける。
銀色の髪、赤い瞳。それはまぎれもなく、ルヴァが捜している鋼の守護聖だった。
「ゼフェル!」
歩き出そうと足を一歩踏みだしたオスカーよりも早く、ルヴァは駆け出していた。その信じられない俊敏さに驚いて、オスカーは一瞬動きを止めた。が、軽く舌打ちすると、二人が消えていった工場の裏手に向かって走り出した。
「ゼフェルっっ!」
後ろから聞きなれた声が聞え、ゼフェルは階段を上がる足を止める。振り返ると、手すりにつかまりゼイゼイと肩で息をしている見慣れた姿があった。
「……ルヴァ?」
ルヴァはその声に応えるように上を見上げた。階段の踊り場に立ち止まり、驚いて声も出せないでいる少年を睨むようにして、一歩ずつゆっくりと階段を上がってゆく。
「やっと見つけましたよ。ええ、今日こそは本気で怒らせてもらいますとも。今まで何をしていたんです? 勝手に聖地を抜け出したばかりか、こんな遠くへマルセルまで……」
「ルヴァ……あのさぁ」
「いいわけだったら聞きませんよ。確かに今まで私はあなたを甘やかしすぎたかもしれませんねぇ。でも今日からは、今からは違いますからね。守護聖として、いえ、あなたの保護者としてびしっと言わせてもらいますよ、覚悟なさい」
おぼつかない足取りで階段を上がり、呼吸が整わず切れ切れになりながらも、いつになく冗舌にルヴァはゼフェルに話しかけた。そんなルヴァをじっと見つめながら、ゼフェルは微かに笑った。
「何がおかしいんです!?」
「だってよ……」
ゼフェルは紙袋を抱えていない左手の人さし指で、自分の頬をちょんと叩いた。
「ここ、口紅ついてるぜ? あんた、どこ行ってきたんだよ?」