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「お待ちしてました。皆さん」
ヴィクトールはエアポートを抜けてきたルヴァ、オスカー、オリヴィエに軽く手を上げて挨拶をした。その彼の出で立ちを見て、オスカーは軽く口笛を吹く。
「ほう。すっかりマルドゥーク風の格好がいたについてきたじゃないか、ヴィクトール」
「からかわないで下さいよ、オスカー様。ここではこの方が動きやすいし、いつもの格好だと目立ちすぎますからね」
ヴィクトールはマルドゥークの一般兵士が着るようなトーブを身につけ、頭にはターバンを略式で巻いている。しかし手袋は相変わらずはめっぱなしなので、少々違和感が残っているが。四人はエアポートの外にでると、チャーリーとランディが待っている幌付きの反重力ランドスピーダーに向かった。
「お疲れさんでした。おや、ルヴァ様とオリヴィエ様もご一緒でしたんか」
チャーリーが振り返っていつもの調子で挨拶する。彼もマルドゥーク風のこちらは一般市民の格好だった。
その隣に座っていたランディは先輩達の姿を見ると、パッと車から飛び降り地面に座り込んで頭を下げる。
「すみませんっっ! 俺、とんでもないことをして皆さんに迷惑をかけてしまいました。どんなに怒られたって仕方がないことをしたんです。今ここで俺を殴って下さい、オスカー様。でないと自分が許せないですっ!」
ひたすら頭を下げるランディの肩に、ルヴァの手がそっと置かれる。
「もういいんですよ。あなたは十分反省しているんですから。何よりあなたが無事で良かったです。もう、皆に心配をかけるようなことはしないと約束してくれますね?」
「……はい、お約束します。ごめんなさい」
ランディは真剣なまなざしでルヴァを見上げた。ルヴァは彼の瞳が何よりも真実を語っているのを読み取って、にこりと笑う。
「だーいじょうぶだよ、ランディ。今ここでオスカーに殴られなくったって、帰ったらみっちりジュリアスが説教してくれるからさ」
「……オリヴィエ様、それ本当ですか?」
ジュリアスの名前を聞いた途端、先程までの熱血ぶりはどこへ行ったのか、ランディはさっと青ざめた。
「そうだな。近年まれにないお怒りだったな、ジュリアス様は」
「もう、どうしようかと思ったよね~。なんせクラヴィスを投げ飛ばしそうになったんだからさぁ」
「ク、クラヴィス様を?」
青ざめて息を飲むランディに、オスカーとオリヴィエの攻撃はさらに勢いを増す。
「ああ、止めに入ったリュミエールは、勢い余って柱に激突するし。それはもう大変な騒ぎだったぜ」
「怖かったよね、リュミちゃん。ハープ振り上げてたもんね」
「…二人とも、それ位にしておきなさい。嘘ですよ、ランディ。心配はいりま
せんよ~、ジュリアスはほんの少し怒っているだけですから」
「ほんの少しって……?」
「うーん、そうですねぇ。一週間ほど謹慎させられて、『ごめんなさい、もうしません。』って3000回位書いて謝れば許してくれる程度ですねぇ」
ルヴァのひと言は、ランディにとどめを刺した。ランディは黙ってランドスピーダーに乗り込むと後部座席で膝を抱えてうずくまってしまった。
「ところでマルセルとゼフェルは? 宿にでもいるの? どーせ今回の騒ぎだってゼフェルが首謀者なんでしょ?」
くすくすと笑いながら呟いたオリヴィエのひと言に、今度はヴィクトールとチャーリーがびくりと身体を震わせ硬直する。
「あらやだ。今度はこの二人が動かなくなっちゃったよ。私、なんか変なこと言った?」
「いや、特に変だとは思わんが。どうしたんだ、ヴィクトール?」
「……いや、あの」
「じ、実はですなぁ……」
「どうしたんです、お二人とも。実はどうしたんですか?」
ルヴァのひと言で、ヴィクトールとチャーリーは同時に地面に座り込み、頭を砂に擦り付ける。
「申し訳ありません、皆さん!俺がついていながらこんなことにっ!」
「堪忍したってーな!俺はそんなつもりやなかったんやけど、ふっと気を抜いた隙にっ!」
「まさか、ゼフェルとマルセルの身に何か?」
「ちょっと目を離した隙にお二人とも……姿が見えなくなってしまったんです」
「すぐ捜したんやけど、まるでわからへん。完全に行方不明になってしもうたんや!」
「ゆくえふめい……!?」
「なんだと! ……お、おいルヴァ、しっかりしろっ!」
一番この星の気候に馴れているはずのルヴァが、一番最初に倒れる事となった。