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ゼフェルは、ぼんやりとあたりを観察しながら歩く。行き交う人々は、主星とはまるで違う格好をしていた。
基本的にはトーブ、と呼ばれる長衣を身にまとっているが、その着方はさまざまだった。
腰の辺りを布で作ったベルトで留めている者。フードをつけてマント代わりに羽織っている者。
膝下より少し長めにして、動きやすいようにズボンとブーツを履いた者。
女性も同じように体全体をトーブで覆っている。しかしそれは外出する時だけで、中にはカラフルな衣装を着けていることは、歩くたびちらりと見える事からもわかった。
しかし、総ての人々に共通していることがただひとつ。それは頭に布きれを巻いて、髪と頭を隠しているという事だった。
だが、ルヴァの巻き方と違っている者もかなりみかけた。
白色の布を頭にきちんと巻き付け、縄状の輪できちんと押さえている者もいれば、赤や薄緑といった色の着いた長い布を、無造作に巻き付け結んでいるだけの者もいる。
女性は四角い布で頭を隠し、ベールのように下げている者がほとんどだ。
「この星では頭を神の前に晒してはいけないんだって」
「何で、おめーそんな事知ってんだ?」
ゼフェルは驚いてマルセルを見る。
「前にルヴァ様から聞いたんだ。図書館で神話を読んでいたら、この星のお話をひとつ教えて下さったんだよ。その時にね」
マルセルは視線をゼフェルから外し、道行く人々を見つめながらそっと話す。
「この星の人々にとって、頭っていうのは神聖な場所なんだ。神様である太陽にいちばん近い部分だから。だから神様が見ている間は、絶対人前で頭を見せてはいけないんだって。でも心を許した人間には、自分の総てを知ってもらう為に、神様にその人と自分は特別なんだって教える為に、その人の前でだけは聖布を外してもいいんだって」
「……ふーん」
人前で絶対にターバンをとらないルヴァ。
「宗教的な物なんですよ」と優しく微笑んでくれる彼は、ゼフェルの前ですらターバンを外したことがない。今のマルセルの話からすれば、外しても不自然ではないはずなのに。
「……あいつ、オレにも気を許していないって事かよ」
「え、なに?」
マルセルが問いかけてきたが、何となく面白くなくて無視したまま、足元に転がっていた小石を思いきりけり飛ばす。その小石は思った以上に勢いよく飛び、前を歩く大男の背中に当たった。
「ゲッ! やばっ!」と思った時は遅い。男は並んで歩いていた数人の仲間と一緒に振り返った。
「……いま、何か投げつけたのはおまえか? 俺達がクマルヴィ親衛隊の一員だと知っててやったのか? え、どうなんだ、坊主」
そう言われて見れば、確かに腰に剣を下げ、胸の前で十字に組まれたサスペンダーには階級章らしき物が見える。間違いなくこの男達は、反乱軍の兵士だった。
「ワザとやったわけじゃねーよ。それにお偉い兵士さんならこれ位よけろよな!」
ゼフェルはいらいらしていたことも手伝って、畳み込むように切り返してしまう。
「ゼ、ゼフェルっ! なんてこというのっ!」
「……この、ガキっ!」
兵士は街中であることも忘れ、腰の剣を素早く抜くとゼフェルの頭に振り降ろす。
それをひょいとかわし、おろおろするマルセルの腕を素早く掴むと、ゼフェルはすぐ側の路地に駆け込んだ。