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「……っくしょんっ!」
「どうしたの、ゼフェル?風邪でもひいたの?」
「馬鹿。こんな暑いトコで風邪なんかひくかよ」
『誰か噂でもしてんのかな?』
ゼフェルは鼻を軽く擦ると、マントに付いたフードをかぶり直す。
「ったく、ほんとにあちーな、この星は。いらいらしてくるぜ。こんなトコで育ったクセに何でのんびりしてやがるんだ、ルヴァの奴」
「持って生まれた性格だと思うよ、ルヴァ様のお優しさと穏やかさは。ぼくらとは最初から違うんだよ、きっと」
マルセルも暑さにだいぶ馴れたのか、いつものほのぼのとした口調に戻っている。先程エアポートでみせた意外な逞しさは、この星に降り立った直後という事もあり、暑さでいささかタガが外れた為のようだ。
先を歩くマルセルとゼフェルの様子に少し安心して、ランディはチャーリーに先程の件を尋ねる
「――あの、商人さん。ひとつお聞きしたいんですけど」
「は、なんでっしゃろ?」
「さっき、俺達が入国出来るよう交渉して下さってましたよね? やけにすんなり通してくれたんですけど、どうしてかなと思ったんです。俺達の身分を明かす訳にいかないし、パスポートも持たない人間を3人も簡単に入国させるなんて、普通出来ませんよね?」
ランディが真顔で尋ねると、ヴィクトールはばつの悪そうな顔をしてそっぽを向き、チャーリーは苦笑いを浮かべた。
「ハハハ。ま、当然といえば当然の疑問ですわな」
チャーリーは頭を軽く掻いた後、右手の人さし指と親指で円を作ってランディの目の前にすっと差し出した。
「ランディ様ももう大人やから教えたってもええか。非合法で何かしようとしたら、手段はひとつしかあらへん。――ほんまはやりたなかったんですが」
「お金、ですか?」
「――さすが、賢くていらっしゃいますなぁ」
チャーリーは自分ばかりを矢面に立たせるなとばかりに、ヴィクトールの腕を小突く。
「これは危険な手段でもあるんですよ。治安やモラルが安定している地域では、通用しないどころかその場で逮捕される可能性もあります。主星などはそのいい例です。今回は反乱直後という事も聞いていたし、そういう事で真っ先に影響を受けるのは役人なんです。反乱首謀者の息のかかった人物が要所々々の配置につくだろうと思ったので、うまくいくかもしれないと考えたわけです」
ランディは少しうつむいて黙り込んだ。正義感の強い彼は、こういった大人の駆け引きが苦手だった。しかもそのおかげで、自分が逮捕されずにこの街を歩いている、という現実がいささかこたえたようだ。
「ランディ様が気ぃ落とす必要はありまへん。渡したんは俺やし、受けとったんはここの役人や。なーんも気に病むことはあらへん」
「でも……」
「気に病むのだとしたら自分の軽率な行動を悔いて下さい。遊び感覚だったのかもしれないが、あなた方のとった行動は、色々な人に迷惑をかけている。その事を肝に命じて下さい」
ヴィクトールはランディを真っ直ぐ見つめ、諭すように話しかけた。
「……はい。すみません、お二人とも。ご迷惑をおかけしました」
ランディの良いところは人の意見を真摯に受け止め、自分の非を素直に認められるところだと、ヴィクトールは常日頃思っていた。今回も素直に謝る彼の様子に好感を覚えた。もっとも欠点もかなりあるのがこの青年の難点でもあるが。
「こちらに着く前に、宇宙船の中で聖地と連絡を取りました。迎えをよこすとの事でしたのでその船が到着次第、主星にお帰り下さい」
「はい」
ここまで真面目に話していたが、ヴィクトールはふっと表情を和らげランディの肩を優しく叩いた。
「まあ、迎えが到着するまで2~3日はかかるでしょう。その間、観光でもして待っていればいいですよ。想像していたより混乱していないようですからね、この街は」