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惑星マルドゥーク。
そこは文字通り、砂漠の惑星だった。いや、砂漠しかないと言った方が真実に近い。
宇宙艇から見たマルドゥークは、不思議な輝きを持っていた。黄金色の光の球体。それは砂に含まれるナトリュウムが太陽に反射して見えたからだった。
チャーリーとヴィクトール。それにいつの間にか潜り込んだランディ、ゼフェル、そしてマルセル。
五人は首都ティアマトのエアポートに降り立つと、その暑さと砂に照り返る太陽の強い光に目を細めた。吸い込む空気が熱を含んでいる。あまり大きな口を開けると砂ぼこりを吸い込んでしまいそうだ。王都の中心から少し外れているとはいえ、このエアポートも人の手によって整備された場所である。
そんな場所ですら砂の猛威から逃れる事は出来ないのである。王都から一歩外にでたらいったいどんな世界が拡がっているのか。それはここで生を受けた者でなくとも、容易に想像できた。
「ほな、俺はちょーっと交渉してきますわ」
「ああ、頼んだぞ」
チャーリーは手を団扇のように振りながら、空港の入国審査室に駆け込んでゆく。
「あの、ヴィクトールさん。交渉ってなんですか?」
ランディは建物の中に消えていったチャーリーを視線で追いながら、ヴィクトールに訊ねた。
「あなた方の入国の許可を取りに行ったんですよ。俺達は、この星と特別に国交のある惑星のパスポートを持っていますが、あなた方はないでしょう?」
「それって偽造パスポートだろ?」
ゼフェルが汗を拭いながら話に割り込む。
「まあ、そんなところです。仕方がありませんよ、主星から来たなんて分かったら大変な騒ぎになりますから。あなた方が守護聖だと分かった時にもね」
ヴィクトールは何も下心がなく冗談めかして呟いたのだが、それがこの少年達の痛いところをついたらしい。マルセルはみるみる表情を曇らせ下を向いた。
「……ごめんなさい。ぼく達やっぱりご迷惑をかけてしまったんですね」
「え、あ、いや、マルセル様。俺はそんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どんなつもりだったんだよ?」
「ゼフェル! そういう言い方するなよ。俺達が悪いのは事実なんだから」
「相変わらずうっとうしい奴だなぁ、おめーは。暑苦しい上にさらに輪をかけやがる」
「おまえなぁ!」
暑さの所為か日差しの所為か、いつもよりテンポが早く二人は臨戦態勢をとった。
「もーっ! 暑いんだから騒がないでよっ!」
先に手を出したのはなんとマルセルだった。手に持っているゼフェルのナップザックでランディの背中を叩くと、飛び上がってゼフェルの頭に一撃を入れる。
「うわっ!」
「いってーっ! なにすんだ!」
「うるさいっていったでしょ? ぼくらはお二人にさんざん迷惑をかけたんだから、これ以上騒ぎを起こさないでよねっ!」
腰に手を当て、何か文句ある? とばかりに睨みつけてくるマルセルに、ランディとゼフェルは同時に首を振った。
「な、何でもないよ。悪かった、マルセル」
「オ、オレも謝るからさ」
不思議な力関係に、ヴィクトールは口を挟むのを忘れて立ち尽くしていた。
ゼフェルは背中を擦るランディの腕をそっと引っ張り、耳元で囁く。
『マルセル、なんか変わったと思わねーか?』
『ああ。あの無言の迫力といい、どっかで見たことがあるような』
『オレもそー思った。当ててやろうか?』
『やっぱりあの方――だよな?』
二人の脳裏には、にっこり微笑む同じ人物が同時に浮かび上がった。