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次の日の夕方。ヴィクトールとチャーリーは早くも小型宇宙艇の中にいた。
あの後すぐに食料と救命道具一式、偽造パスポートや怪しげな宇宙艇をヴィクトールの指示によってかき集めたのはチャーリーだった。思ったよりも遥かに早く事が進んだのは、やはり宇宙一の大企業、のなせる技かもしれなかったが。
「この船の燃料もマタルでしたわ。やっぱり便利ですわー、この結晶は」
「聖地の設備もその結晶に頼るところが大きいらしい。それだけに今回の事件はほっとけなかったんだろうな」
「まさに、マタル様々やなぁ」
主星の大気圏を抜け1日がたった。
操縦をオートに切り替えしばらくしてから、計器を見ていたヴィクトールは不思議そうに首を傾げた。
「どないしたんです?」
チャーリーはコーヒーメーカーをこぽこぽ言わせながら、簡易テーブルにカップを二つ並べる。
「いや。おい、チャーリー。俺が指示した通りの量しかこの船には荷物を積んでいないだろうな?」
「はぁ。もらったメモの通りやけど。何かあったんですか?」
「……ここを見てみろ。重量計のメーターが規定以上になっている」
「あ、ほんまや。危険領域には達してへんけど」
「航行に差し障りはないと思うが、念のため調べてこよう」
「コーヒー入りましたけど?」
「戻ってから飲む。置いといてくれ」
「はいな。俺の愛で冷さんようにしときますで~」
だいぶチャーリーの軽口に馴れたのか、ヴィクトールは黙って倉庫へと向かった。
荷物の入ったダンボールをひとつひとつ覗き込みながら、内容を確認する。
「これも、食料か。……おや?」
その内のひとつ、携帯用のチョコレートバーの袋がなぜか破れて置かれていた。
ヴィクトールは甘いものが苦手だが、チョコレートは意外と栄養がある。持ち運びに便利なチョコレートバーも緊急食としては役に立つので、リストに加えておいたのだった。
「チャーリーの奴、まさか食べかけを持ってきたんじゃないだろうな」
一人ごちた時、背後に人の気配を感じた。わざと振りかえらずにそっと後ずさり、その人物をとらえられる範囲まで進むとくるりと振り向き服の端をとらえた。
「誰だっ!」
「わーっ! ごめんなさーいっ!」
「え? ……マ、マルセル様っ! ど、どうしてここにっ!」
頭を抱えてうずくまるマルセルを見下ろして、ヴィクトールは呆然と立ち尽くしていた。