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新宇宙は生みだされ、女王試験は終了した。
だが生まれたての宇宙は、まだ安定していない。
その為しばらくの間(宇宙が安定するまで)新女王と補佐官は、引き続きこの聖地に留まる事になった。
教官を務めた三人は身辺整理が済み次第、この聖地を去る事になっている。
火龍族のメルは、その占いの腕が認められ(聖地の女性陣の強い希望により)もう少しだけ聖地に逗留が決まっている。
王立研究院の主任エルンストは、新宇宙がしっかりと安定するまでここを去ることは出来なかった。
ただ一人、日の曜日に庭園に出没していた、怪しげな商人だけがいつの間にか姿を消していた。しかし彼の場合、現れたのも突然だったので不思議に思う者はいても、不審感は誰も抱かなかったのだが。
――つまり聖地は落ち着きを取り戻していたのだ。
お祭り騒ぎの女王試験が終り、平穏な日常が戻ってきた。
ゆったりと時間の流れる日常が。
だが、それがゼフェルには我慢できなかった。
もともと、聖地ののんびりムードに違和感を感じていた彼は、祭りの後の何とやらでその違和感にさらに拍車がかかってしまった。
「退屈で死にそーだぜ……。よー、マルセル! なんか楽しい事ねーか? 宇宙がひっくり返るくれー面白れー事がよ」
ふらふらと散歩に出かけ、屋敷にマルセルがいる事を知ったゼフェルは、忙しそうにクッキーの種をかき混ぜる彼に向かってそううそぶいた。
そしてマルセルにたしなめられ……とまあここから先はすでに述べた通りである
「だからって、何でオレが花束作ってるんだよ。これじゃランディ野郎の後始末してるみてーじゃねーか」
ゼフェルはぶつぶつと文句を言いながら、ライラックの花の茎を数本ずつ束ね、根元をくるくると器用に輪ゴムで留めてゆく。
「とかいいながら、結構楽しんでない?」
「……殴るぞ。あいつにやらせろよ、張本人によ」
「あのねぇ、ゼフェル」
マルセルはクッキーを詰める手を止め、渋い顔で花束を作るゼフェルを真剣な表情で見つめる。
「適材適所って知ってるでしょ? あのランディに繊細な花束造りなんて向いてると思う?」
ゼフェルはしばし沈黙する。そしてマルセルをちらりと見ると、乾いた笑いを浮かべた。
「ハハハ……」
「わかったら早くしてね。水に入れといてあげないと枯れちゃうから」
マルセルが再びクッキーを詰めだすと、ランディがまた息を切らせて、台所に駆け込んでくる。手にはピンクやら水色やらのリボンを幾つも持っていた。
「これでいいかい、マルセル?」
「うん。ありがとう。それじゃ、ゼフェルがラッピングしてくれてるから一緒にリボンかけてくれる?」
マルセルはにこりと微笑んで答える。
ゼフェルはその笑顔を見て心の中でため息をついた。
『こいつ、段々聖地に毒されてるような気がする。……ハァ、こんな奴等のいねー所に行きてーな』