「へ?」
わざとらしくとぼけた声を上げたサザキは改めて目線を千尋の方へ向け、彼女の制止にも関わらずいつの間にか胸を揉み始めた自分の手に、今さら気がついたように目を見開いた。
「おわっ、ホントだ!」
「……わ、わざとらしい……っ」
「そうか?」と惚けながらも手を止めないサザキは、段々と息が上がっていく千尋を見ながら、小さくささやいた。
「いや、こうしてたらな、そのうち千尋がその気になってくれるんじゃねぇかなーって思って」
「いや!って、さっき言ったじゃない……っ」
「んー、けどなぁ……」
耳元で熱い息とともに囁かれた千尋は、ぴくりと身体を震わせた。その身体を巻物を掴んだ左手でぎゅうっと抱きしめなおしたサザキは、小振りな胸を右手で包み込みながら、彼女の耳朶をそっと食んだ。
「オレの方はもうその気になっちゃってるけど」
言うとサザキは巻物から手を離し、千尋の右胸を服の上から掴んで揉みしだきながら、右手を彼女の足の付け根にするりと滑り込ませた。
「や……っ! や、だ……っ!」
薄布の隙間から滑り込んできたサザキの指は千尋の制止などきかず、閨にいるときと同じように彼女の中にすんなり収まってしまった。
そうしてゆっくりと動きはじめた指の動きに翻弄され、頭をのけ反らせて声を漏らしはじめた千尋の姿に、サザキはごくりと咽喉を鳴らした。追い詰められていく千尋の唇に接吻て甘さを充分に味わうと、サザキは手の動きを止めぬまま彼女の耳に口を寄せた。
「……ふ、う……っん」
目尻を赤く染めた千尋が潤んだ瞳をサザキに向けると、彼は困ったように眉間に眉を寄せてぼそりとつぶやいた。
「もう限界。だから……いいか?」
言いながら彼女の中を確かめるようにゆっくりと掻き回すと、それの意味するところを理解した千尋が目を見開き、赤くなった顔を更に赤らめながらしつこく動き続けるサザキの手首をぎゅっと掴んだ。
「い、いいわけない……っ! み、みんなが見てる……っ」
しかしサザキは左手を動かすと、自分の腕を掴んだ千尋の手の上に重ねて邪魔をさせないように更に押さえつけた。
「見てねぇって。あんたがオレの側に来たくらいから、あいつらいつの間にか消えてたぜ」
サザキの言葉に千尋は上目遣いに辺りを見回したが、確かに彼の言うとおり、辺りから人の気配は消えている。ということは日向の連中は、自分たちの大将が「こういうこと」を千尋にしでかす可能性を予想してたということだ。
「な? 大将思いのいい連中だろ?」
「う……で、でもっ……やだっ」
「なんで?」
「だってっ……昼間からなんて……は、恥ずかしい……もん」
「ってもなぁ……。じゃあ部屋に戻るってのはどうだ? あそこなら、窓を閉めちまえば暗くなって夜と同じだ。な、それならいいだろ?」
「あっ……やだ……ってば! 我慢し……てっ……んっ」
「あのなぁ。この状態で辛抱しろっての? そいつぁ、あまりに酷ってもんだぜ」
言いながらため息をついてみせるものの、サザキは楽しそうな笑みを浮かべたままで、少しもせっぱ詰まった様子はない。むしろこの状況を楽しんでいるようにしか見えなくて、だから千尋は悔しげに下唇を噛みしめると、サザキの腕に爪を立てて引っ掻いた。
「いてっ! ひでぇなぁ」
「だ、ってっ……ちっとも、やめ……てくれ……ないからっ」
「そりゃあ無理だ。だって姫さんが、すげぇ可愛い声出してるんだから。もっと聞きたくなっちまうだろ」
「ば……かっ。サザ、キの……えっちぃ」
千尋の抗議の言葉にくすりと笑ったサザキは、答える代わりに彼女の奥を抉るように指を動かしはじめた。
「や……あっ!」
「えらい言われようだ……」
的確な刺激を与える手の動きに翻弄され続け、ついに高みに昇りつめそうになった千尋は、たまらなくなってサザキの身体にしがみつくように身を起こした。
するとその途端にサザキはするりと手を引くと、彼女の身体を包むように抱きしめた。とつぜん止められた行為に、千尋は訴えるような目で胡乱げにサザキを見上げた。頬を上気させ、呼吸を乱したままの千尋の様子にサザキは薄く笑い、金色の髪を撫でながら彼女の耳元でささやいた。
「馬鹿で結構。えっちでかまわねぇよ。だから……な、部屋行こうぜ?」
そうささやかれて首筋に柔らかく吸い付かれてしまっては、千尋はもううなずくしかなかった。
彼女が了承した途端にサザキは嬉しそうに目を細めると、巻物を素早く丸めて千尋の腹の上に乗せ、彼女ごと両腕に抱いたまま立ち上がった。だがその行動があまりにも迅速で軽やかだったので、千尋は怪訝そうに眉をひそめた。
先ほどサザキは「もう限界」と言っていた。そしてそれは、そういう経験がほとんどない千尋にもなんとなく想像はつくわけで、サザキはかなりせっぱ詰まっているはずだ。なのに、彼はのんきに千尋を抱き「そんじゃお言葉に甘えて、まずはこっちのお宝から堪能させてもらうかー♪」などと浮れながら、悠然と甲板の上を歩いている。
「……サ、サザキ」
「ん? なんだ?」
「うそ……ついたの?」
余裕のない声で彼に問うと、サザキは一瞬きょとんとした表情を浮かべた。だが、すぐに目を細めて薄く笑うと立ち止まり、千尋を抱えなおした。
「いや、嘘じゃねぇって。姫さん、かなり限界だったろ?」
「わ……私?」
「ああ」
小さくうなずいたサザキはなにを思いだしたのか、嬉しそうに相好を崩しながら顔をわずかに赤らめた。
「あーんな可愛い声で啼かれたんじゃあ、そりゃあなんとかしてやらなきゃって思うだろ。だから、な」
そんなサザキを呆れたように見上げていた千尋だったが、やがて顔を真っ赤に染めると両手の拳をぎゅっと握りしめた。
「そ、そうさせたのはサザキじゃないっ! も、わ、私っ、サザキが……っちゃったからって思った、からっ!」
「そっか、あんなになってもオレの心配してくれたのか。ほんっと、千尋は可愛いなぁ」
「……う」
「けど、オレのことだなんてひとっことも言ってないぜ」
唖然とする千尋に笑いかけたサザキは「なんたってオレは『えっち』だから、あれっくらいじゃ全然足りないっての」と言って満足げにうなずくと、またのんびりと歩き出した。
「これで、たーっぷりヒマつぶし出来るだろ?」
「サ……サザキぃ……っ」
半分べそをかいた千尋が抗議の声をあげたが、サザキは楽しそうに笑うだけで、そのまま甲板を突っ切って船室へ続く階段に足を降ろした。