その微笑みは誰のもの?

(1)

まぁ、期待はしていなかったけどさ――。

わざとらしい咳払いをしようとも、頬をむにっとつねってみても、まるで無反応。

「どうせ起きてんだろ? ったく、面倒がってねぇで目くらい開けろ」

呆れてそう呟くと、今まで微動だにしなかった男が、ゆっくりと薄目を開けた。

「よ、おはようさん」

将臣が薄笑みを浮かべて声をかけるが、薄目を開けただけの男は、またしばらくすると目を閉じてしまった。

「っておい! なに寝直してんだ、お前っ!」

「――目くらい開けろというから…開けてやっただろう?」

「自分に都合よく解釈すんな。おら、起きろよ、知盛。メシ食いに行こうぜ、メシ」

言うと将臣は、知盛が寝転がっている寝台の足を蹴った。だが知盛は、寝台の揺れなど気にも留めずにごろりと寝返りを打ち、将臣に背中を向けた。

「……面倒だ。こんな朝から、腹など空かんしな」

「もしもし知盛さん? もう、とっくに昼過ぎてんですけど…?」

自分もかなり朝は弱いが(高校時代は遅刻常習者だった)、それでも目の前の男には負ける。いや知盛は、朝に弱いわけではなく、ようするに感心のないことにはまったく無反応で無精なだけなのだ。それにこうして顔を背けてしまったら、それこそ襲撃者でも来ないかぎり絶対に動かない。

しばらく知盛の後頭部を呆れた表情で見おろしていた将臣だったが、やがて小さなため息をつくと「んじゃ、適当に土産でもみつくろってくるわ」と呟き、くるりときびすを返した。

「――有川」

背中にかけられた声に、将臣は立ち止まって振り返った。

「なんだ?」

「食い物はいらん……酒がいい」

こちらに背を向けたままぼそりと呟くと、知盛は片手を気だるげに上げて「さっさと行け」とばかりにひらひらと振った。