Bosom Caresser   -秘めやかな抱擁-

(2)

しばらく聖殿の廊下を歩いていると、腕の中でロザリアが動いたような気がした。立ち止まって顔を向けると彼女の白い手が素早く動き、次の瞬間オスカーは、左頬に微かな痛みを感じた。

「……元気そうで安心したぜ、お嬢ちゃん」

呟いて彼女を見おろすと、ロザリアは真っ赤な顔をしてオスカーを見上げていて、その唇はわなわなと小さく震えていた。

「や、やめてって申し上げたじゃないですのっ……な、なんで、あ、あんなことっ……」

するとオスカーは微かに唇の橋を持ち上げ、腕の中のロザリアの瞳を覗き込んだ。

「理由がいるのか? まぁあえて言えば、君がどうしても欲しくなったから、ってところか」

「ふざけないで!」

「ふざけてなんかいないさ。俺は大真面目だぜ。こんな魅力的な恋人を前にしてその気になったからって、責められるいわれはないと思うんだが」

「そんな言い訳で、わたくしが『なら仕方がないわね』って許すとでもお思いですのっ!」

「許さないだろうな、君は」

言うとオスカーはくくくっと笑い、再びゆっくりと歩き出した。

「許されなくとも、それが真実なんだから仕方がない」

「オスカー様っ!」

「ああ、君の可愛らしい声で名前を呼ばれると、本当にゾクゾクするな」

そんな飄々としたオスカーの態度が、またロザリアの勘に障ったらしく、彼女は誰かに見とがめられないようにと、できるだけオスカーに身体をピッタリと寄り添わせ「ヘンタイ!」だの「最低ですわ!」だのと、思いつくかぎりの罵倒を彼に浴びせ続けていた。

だがそのことに夢中になるあまり、オスカーがどこに向っているかはまったく考えていなかったらしく、彼が自分の執務室に戻って彼女を私室のソファに座らせてから扉に鍵をかけ、再び彼女のところへ戻ってきて隣に腰かけてからようやく、はっとなって廻りをきょろきょろと見回した。

そんな彼女を楽しそうに見ていたオスカーは、やがてすっと腕を伸ばすとロザリアの頬に手を添えて、彼女の顔をぐっと引き寄せた。

「人に見られるのがいやだったんだろう。ここなら誰も来ない。安心していいぜ……」

近づいてくるオスカーの顔を唖然と見ていたロザリアだったが、はっと我に返るとしゃにむに彼の腕を振りほどき、くるりと背中を向けてつんと口を尖らせた。

「わたくし、怒ってるんですからねっ! 反省なさるまではおあずけですっ!」

「それは……困るな」

くすりと笑うとオスカーは上着を脱ぎ、ロザリアを後ろからそっと抱きしめた。そして彼女の腰に自分のそれをぐっと押し付けると、びくりと身体を震わせたロザリアの耳元に唇を寄せた。

「わかるだろう? 許してもらえないと、かなり困ることになるんだが……」

そっと耳たぶを噛むと、ロザリアは微かに息を漏らした。だがすぐに頬を真っ赤に染めて、駄々をこねるように小さく首を振った。

「し、知りませんっ!」

「知らないとは言わせないぜ。君の所為でこうなったんだから、責任をとってもらわなきゃ、な」

「か、勝手なこと……ばっかり言わないでっ!」

ロザリアの長く青い髪をすくい上げて肩から胸元に垂らすと、顕になった白い首筋にオスカーは唇を這わせた。

「や、やめっ……」

「無理な注文をするなよ……」

くすりと笑うとオスカーは、ロザリアの脇の下から腕を回し、豊かな双子の膨らみを両手で持ち上げた。

「あ……っ」

ロザリアが小さな声を漏らすと今度は、服の上からでもはっきりわかるほど固くそそり立っている先端を、ゆっくりと指で押しつぶした。

「うっ……んっ」

「さっき達したばかりで燻ってるんだろう? ほら、君は言葉よりも、身体の方がずっと正直だ……」

呟いてロザリアの耳に口づけると、オスカーはドレスのホックに手をかけて一気に腰まで引き下ろし、ロザリアの肩から青いドレスをゆっくりと剥いでいった。

そうして彼女の上半身を外気に晒すと、その肩に軽いキスを送りながら下着を丁寧に外させ、顕になった白く柔らかい膨らみを改めて手で被い、丹念に揉みしだき始めた。

「は、あっ……んっ……あうっ……」

オスカーが手を動かすごとに、双丘は自在に形を変えて彼の手の平に吸い付いてきた。膨らみと同じくらい白い首筋に舌を這わせながら、強く握り込むように揉むと、ロザリアは顔をのけ反らせて甘い吐息を漏らした。

そんな彼女の声を聞き、乱れていく姿を見ているだけで腰の辺りに熱い熱がたぎるのを感じたオスカーは、彼女の胸からすっと手を放した。そして自分も着ていた服を素早く剥ぎ取ると、改めてロザリアを背後からぎゅっと抱きしめた。

とつぜん中断された愛撫に、ロザリアは胡乱げな表情を浮かべて微かに振り返った。そしてその表情は、またオスカーにとっては新鮮な物だったので、彼は微かに微笑むと、ロザリアの目元にそっと口付けた。

「……そんな顔をして俺を見ないでくれ……どうにかなっちまいそうだ」

「……オ、スカーさま……?」

怪訝そうに首を傾げるロザリアに笑い返すとオスカーは、彼女の腰を掴んで持ち上げた。

そしてドレスをたくし上げて下着を乱暴にはぎ取ると、彼女の上体を四つ這いになるようにソファに押し付けて足を開かせ、薄紅色に震える花弁を指で押し開いた。

「や、あっ!」

ロザリアが羞恥に悲鳴を上げたが、オスカーはそれを無視し、彼女の白い太股を両手で掴んで尻を持ち上げると、目の前で華が綻んだように揺れ、甘い蜜を滴らせている窪みへと唇を寄せた。

「ひっ……あっ! あ、や、やめ……っ!」

ざらつく舌が、赤く熟れて敏感になっている小さな突起に絡みつくたび、弾力のある唇が蜜壺を銜え込み、音を立てて蜜を吸い込むたびに、ロザリアの背中を電流のようなものがいくども走り抜けた。

「あ、あ、あっあんっ…………あ、ううっ」

鼻から抜けるような甘い声を漏らしながら、知らず知らず腰を動かしていたロザリアは、やがてオスカーの舌が窪みの一画をぐっと抉った途端、小さく叫んで背中をのけ反らせ震えると、ぐったりと頭を垂れた。

溢れだして白い太股をつたう彼女の愛液を丹念に舐めとると、オスカーは改めてロザリアの身体を引き寄せて、腕に抱いた。

そして胡座をかいて座ると、その中心に向ってロザリアの身体をゆっくりと下ろした。

「あ……ああ……っ」

ロザリアはオスカーを受け入れながら、小さな声を漏らした。だがその顔には苦悶の表情はなく、どこか安堵したようなそれで、彼女はいつもと同じようにゆっくりと、オスカーを包み込んでいった。

すっかり納め終えると、オスカーは下から軽く彼女の身体を突き上げた。するとロザリアは「んっ!」と小さく呻き、オスカーの肩に顔を凭れかけ、はぁっと大きく息を吐いた。

「……辛いか?」

オスカーが訊ねると、ロザリアは顔を伏せたまま小さく首を振った。

「なら、気持ちいいか?」

しかし今度もロザリアは首を振った。だが先程よりももっと深くうつむいていて、今度は抗議するようにオスカーの腕をぎゅっと掴んだ。

「いやならやめてもいいぜ。俺はどうとでもなるしな」

そう言ってオスカーはわざとらしく息を吐くと、ロザリアの腰を掴んでその身体をわずかに持ち上げた。自身の中に収まったオスカーの猛りが半分以上抜かれた途端、ロザリアは切なげに唇を震わせた。

「あ……やあっ」

思わず漏れた懇願の吐息に、ロザリアははっと我に返って頬を赤らめた。そしてオスカーにしがみつくように縋ると、それ以上動かさせないと言わんばかりに、強く彼の腕を握りしめた。

「続けて欲しいのか?」

「……オスカー様が……そうしたいのなら」

「俺じゃなく、君がどうしたいかを聞いてるんだが?」

苦笑いを浮かべてロザリアの耳元で問うたが、彼女はオスカーの首筋に顔を埋めたまま、荒い呼吸を繰り返すだけだ。

限界なんだろうに――この強情さと天の邪鬼なところは、どれだけ攻め立てて乱れてさせても変わらないな。

本当は快楽に手を取られて、今にも流されそうなくせに。でなければ、こんなにも締めつけてくるこの感覚は、錯覚だとでも言うつもりだろうか。

せっかくひとつ新しい面を発見したのだ。いっそこの強情という名のドレスも、この際力づくで剥ぎ取ってやろうか。

オスカーは一瞬そう思ったが、そんな強情さもまた、彼女の愛らしさの一つだと思い直した。

「そうだな……それこそ、焦る必要はないな」

呟いて一人笑うとロザリアが顔を上げ、潤んだ瞳を向けながら怪訝そうに首を傾げた。

「オスカー、さま?」

そんなロザリアに向ってオスカーは優しく微笑み返すと「なんでもない」とささやいて彼女に口づけ、その身体を再び自身の上に落とした。

「ああっっ!」

深く抉られたその刺激に、ロザリアの身体は大きく戦慄いた。そんな彼女を抱きしめたまま、オスカーはゆっくりと身体を倒してソファに横たわると、繋がったままでロザリアを組み敷いた。

「じゃあ続けるぜ……それが俺の望みだからな」

ひと言ささやいて微笑むとオスカーは、彼女の中を蹂躙するように身体を動かし始めた。

「あ……はうっ……んっ、んっ……あ、あっ……」

やっと与えられた快感にロザリアは喘ぎながら、オスカーの首にぎゅっとしがみついた。オスカーはロザリアを思うさまかき回しながら彼女の耳朶を噛み、揺れる乳房を両手で丹念に撫で回した。

ロザリアは息を短く吐きながら、涙と愛液を止めどなく溢れさせ、嬌声と自分を抱いている男の名をひたすら交互に呼び続けていた。

「ああっ……オ、スカーさま……はぁっ……オスカー、さ、ま、ぁ……」

「オスカーでいい……ただオスカーと、呼んで、くれ……」

「はぁん……あ……オ、オスカーぁ……あ、あ……っ……オ、スカーぁ……っ」

ロザリアの甘い声にオスカーは満足げな笑みを浮かべると、彼女の腰をぎゅっと押さえつけ、さらに深く楔を打ち込んだ。

――そうだ、焦らなくていい。

……俺はずっと君のもので

君は……未来永劫、俺だけのものなんだから。

そう思った瞬間、オスカーの背を快楽という衝撃が駆け抜け、腕の中で絶頂を迎えて気を失っているロザリアを更に強く抱きしめると、彼女の中に己がすべてを解き放った。

おわり