眩暈

(12)

オスカーは身体を起こすと、自分の口元を手で拭う。そして身に付けていた物を総て脱ぎ捨てると、横たわるロザリアの身体を覆うように、ゆっくりと自分の身体を重ねた。

その重みで、ロザリアがうっすらと目を開けた。その途端、目の縁から涙が零れでる。

「……オ、スカー……」

なかなか整わぬ息の下で、ロザリアはオスカーの名を呼んだ。

オスカーはロザリアの額にかかる汗で湿った前髪を、一房ずつ丹念に外してやりながら、優しく囁いた。

「辛かったら言えよ? 君に無理はさせたくない……」

ロザリアはこくんと小さく頷くと、きゅっと強く目を瞑った。

それを確認したオスカーは、ロザリアの頬に軽くキスをする。そして素早く右腕を動かすと、彼女の腿を軽く持ち上げて、溢れんばかりの蜜を湛えたそこに、彼自身をぐっと押し込んだ。

「んんっ!」

ロザリアが衝撃に身体をのけ反らせた。今までとは比較にならない質量を湛えたそれに、驚きと恐怖が彼女を襲う。が、それに必死であらがうように、ロザリアはオスカーの首にしがみついた。

「……大丈夫か?」

オスカーが心配そうに問い掛けたが、ロザリアはただ頷くだけだった。そして、まるで懇願するように彼の赤い髪に指を絡ませた。

「ロザリア……」

オスカーは驚いて彼女を見下ろしていたが、やがて軽く頷き返すと、改めて身体を進めた。

「いた…………っ」

「ロザリア……力を抜くんだ」

オスカーの言葉に、ロザリアは必死で力を抜いた。すると、ずずっと自分に中にオスカーが侵入してくるのがわかり、躯の芯が熱く疼いた。

それを何度も繰り返してようやく総てを納め終えると、オスカーもロザリアも激しい呼吸を繰り返し、全身を汗で濡らしていた。

「これだけで……大仕事だな」

オスカーはそう呟くと、ロザリアをそっと抱きしめてくっくっとおかしそうに笑った。

「ごめんなさい……わたくし、慣れていなくて……」

ロザリアがそう謝ると、オスカーにこつんとおでこを指で軽くはじかれた。

「馬鹿なこと言うなよ。慣れてられたらこっちが困るぜ」

「……そ、それもそうですわね」

言ってしまってから、自分のあまりにも恥ずかしい言葉に、ロザリアはカアッと顔を赤らめる。そんな彼女が可愛らしくて堪らず、オスカーはくすぐるようなキスをロザリアの首筋や頬に何度も落とした。

「やんっ! ちょ、ちょっとオスカーっ! く、くすぐったいですわっ!」

「君があんまり可愛いことを言うからいけないんだぜ?」

「もうっ! やめてって言ってるでしょう! あんっ! 意地悪しないでっ!」

ロザリアがソファから手を放し、オスカーの腕を拳で何度も叩いて抗議した。が、その手はあっという間に返されて、オスカーの大きな手に納まったかと思うと、ソファにそっと押し付けられてしまった。

ロザリアが顔を動かして見上げると、そこではオスカーが微笑んでいた。

「オスカー……」

「……最初に断っておくが、今日の俺はあんまり余裕がないんだ……。悪いが手加減できそうにない……」

「え……?」

「だが、辛かったらすぐに言ってくれよ。やめられるかどうかは保証できないけど……な」

「ちょっ……!」

ロザリアが目を見張ると同時に、オスカーの身体が激しく動き始めた。

 

いままで体験したことのない、身体を引き裂かれるような痛みにロザリアは、何度も叫びながら首を振って拒絶の意志を現した。その首筋に顔を埋めていたオスカーは顔を上げ、彼女の耳元に唇を寄せて荒い息を抑えながら囁く。

「少しだけ……我慢してくれっ……」

「や、あっ……や、やめっ……お、ねが……い」

ロザリアの泣き声にオスカーはわずかに顔をしかめたが、改めて華奢な身体を抱きしめたまま、何度も何度も彼女の中を突き上げた。

先程冗談交じりに言った言葉は嘘ではない。今さら彼女が泣いて頼んでも、もうオスカーは自分の欲望を止めることはできないからだ。

オスカーに押さえつけられていたロザリアの指が、逃れようと必死で動く。やがてそれが無理だとわかると、オスカーの手をぐっと力を込めて握り返した。

しばらくして、ロザリアのしかめていた眉が少し緩む。と、それに呼応したように、彼女の口から零れる苦痛の呻きに、甘い喘ぎが混じり始めた。

するとオスカーは身体をかがめ、ロザリアの耳朶をそっと噛んだ後、舌でゆっくりと舐め上げた。

「あ、あ……っ」

感極まったようにロザリアが吐息をもらした途端、繋がった彼女の中から熱い欲望が蕩けだし、オスカーの固い猛りに濃密に絡みついた。

その温かな感覚に、オスカーの雄がぞくりと反応した。彼は腰を回すようにして何度も何度もロザリア自身を打ち据えると、その度に彼女は恍惚の表情を浮かべ、彼をぐっと締めつけてくる。

「ロザ……リア……」

感極まって彼女の名を呼んだが、返事はなかった。ただ彼女の身体だけが、オスカーに十分すぎるほどの答えを返してくれた。

こうしていつまででも彼女を感じていたかったのだが、さすがに限界を感じたオスカーは、深く息を吐きだすと、ロザリアの手を放してその身体をぎゅっと抱きしめた。そして、力強く最奥まで彼女を突き上げはじめた。

「ひ、あああっっ!!」

さらに激しい刺激にロザリアは、オスカーの腕の中で大きく身体をのけ反らせた。そして彼女がひときわ高く叫んで高みに達したすぐあと、オスカーは堪えられなくなった欲望をすべて、彼女の中で開放した。

 

「……今日は怒らないんだな」

オスカーが抱きかかえたロザリアを見下ろすと、彼女はふいっと顔を逸らしてしまった。

「仕方ないですわ…………あ、歩けないんですから」

呟くような小さな声で告げた後、ロザリアはオスカーにしがみつき、顔を隠すようにして精一杯の主張をした。

「でも、なるべく人の通らなそうな道を選んで下さいね。堂々と中庭に出るようなことは絶対なさらないで」

「わかっているさ」

オスカーはそう言って笑うと、ロザリアの頬にそっと唇を寄せた。

「情事の後であでやかに輝く君を、他の奴に見せるなんてもったいない」

「オスカーっ!!」

 

真っ赤になって怒るロザリアの様子に、オスカーは楽しそうな笑い声を立てた。

おわり