「君の幸せを祈ってるよ」
そう言って貴方は微笑んだ。
いつもよりほんの少しだけ寂しそうな笑顔で。
「ありがとうございます」
そう答えてわたしも微笑み返した。
きっと泣きだしそうに見えただろう笑顔で。
あの時降った雨。
陛下のお力がなくなったせいだ、と皆は囁きあっていた。
けれどわたしは知っている。
あれはわたしのせい。わたしの心に降った涙。
貴方の優しさに触れて、貴方のぬくもりから離れるのが辛くて流した涙の雨。
「君が立派な女王になれるように、俺はずっと支えていくよ」
試験が終わったあの時、貴方はわたしにこう言った。
けれど貴方は知らない。わたしの幸せがなんだったのかを。
わたしの幸せは、女王になることなんかじゃない。
でも、わたしは微笑んだ。
「ありがとうございます」
貴方にだけは泣き顔を見られたくないから。笑顔のわたしが好きだと言ってくれたから。
貴方の微笑みが、わたしの幸せだったから。
そしてわたしは孤独への階段を上った。
『女王』という名の独房へ、自ら進んで囚われた。
貴方のいるこの世界を守っていきたかったから?
ううん。多分それは少し違う。
たとえずっと側にいられなくても、その手に触れられなくてもいい。
貴方の微笑みを見れる場所にいたかったから。
けれど――それさえも天は許してくれなかった。
そうして貴方は、この地を出て行く。
只人となった貴方は、これから足早に時を積み重ねていくのだろう。
『女王』という名の牢獄に、わたしだけを残して……。