永遠の休暇

(1)

「君の幸せを祈ってるよ」

そう言って貴方は微笑んだ。

いつもよりほんの少しだけ寂しそうな笑顔で。

「ありがとうございます」

そう答えてわたしも微笑み返した。

きっと泣きだしそうに見えただろう笑顔で。

 

あの時降った雨。

陛下のお力がなくなったせいだ、と皆は囁きあっていた。

けれどわたしは知っている。

あれはわたしのせい。わたしの心に降った涙。

貴方の優しさに触れて、貴方のぬくもりから離れるのが辛くて流した涙の雨。

 

「君が立派な女王になれるように、俺はずっと支えていくよ」

試験が終わったあの時、貴方はわたしにこう言った。

けれど貴方は知らない。わたしの幸せがなんだったのかを。

わたしの幸せは、女王になることなんかじゃない。

でも、わたしは微笑んだ。

「ありがとうございます」

貴方にだけは泣き顔を見られたくないから。笑顔のわたしが好きだと言ってくれたから。

貴方の微笑みが、わたしの幸せだったから。

 

そしてわたしは孤独への階段を上った。

『女王』という名の独房へ、自ら進んで囚われた。

貴方のいるこの世界を守っていきたかったから?

ううん。多分それは少し違う。

たとえずっと側にいられなくても、その手に触れられなくてもいい。

貴方の微笑みを見れる場所にいたかったから。

 

けれど――それさえも天は許してくれなかった。

そうして貴方は、この地を出て行く。

只人となった貴方は、これから足早に時を積み重ねていくのだろう。

『女王』という名の牢獄に、わたしだけを残して……。